薄毛と一口にいっても、その原因はさることながら進行具合や脱毛が目立つ場所など症状も人それぞれです。
薄毛のタイプには、前頭部から頭頂部にかけて脱毛が始まる「A字」と「M字(中央だけを残して左右から進行)」、頭頂部から脱毛が始まる「O字」があります(下図参照)。M字よりO字の方が治療への反応が現れやすく、その明確な原因はいまだ特定されないながらも、AGA(男性型脱毛症)の要因となる男性ホルモンDHTの攻撃に対する敏感さや血行の差などが考えられています 。
このように、効果の現れ方は頭部の各部位でも差がありますし、眠っているのか死んでいるのかという毛根の状態によっても異なるものです。育毛や発毛治療の効果が期待どおり得られない、部分的にもう少し増やしたいなどの希望があれば、自毛植毛という方法を選択肢に入れてみるといいでしょう。
自毛植毛とは、耳周辺の側頭部から後頭部にかけて毛が半円状に残っているU字部分(右図参照)から、毛根ごと採取した毛を移植する施術です。薄毛はAGAによるものがほとんどで、DHTによって脱毛が引き起こされた前頭部と頭頂部に対し、U字部分はDHTの影響を受けません。そのため、前頭部や頭頂部に株分けされても永続的に発毛し続けるというのが大きな魅力です。
植毛と聞くと失敗や痛みなど不安を感じる人が少なくありませんが、「切る植毛」が主流だったのは一昔前のこと。昨今は、極細のニードルを使ってドナー(移植するための毛根)を医師の手で採取する「切らない植毛」が一般的で、傷がほとんどできない、施術スピードのアップ、ダウンタイムの軽減など、だいぶ身近な薄毛治療になったといえるでしょう。
とはいえ、ドナー摘出のスピードやムラのない均一性、ドナーを傷めない技術など医師の腕に大きく委ねられるので、実績や安全性などに信頼のおけるクリニック選びには慎重になる必要があります。
そこで近年注目を浴びているのが、アメリカの有名な植毛外科医と医療用ロボット工学の専門家の共同開発による植毛用マシーン、ロボットアームです。損傷が少ない質のいいドナーだけを選別し、切断したり傷つけたりしないよう的確なアングルとスピーディな採取が可能な最先端技術を搭載しています。2015年10月現在、ロボットアームが導入されているのは、日本全国で聖心美容クリニックを含む3院のみとなりますが、今後も増え続けていくでしょう。
最先端のロボットによって摘出されたドナーは、脱毛が特に著しい部分や個人の額の形、父親や祖父の薄毛のタイプなどによる今後の脱毛の予測など、さまざまな側面からヘアスタイルをデザインしつつ植え付けていきます。そのような現在の状態と未来の脱毛の傾向を見極める目、デザインのセンス、ムラなく植え付ける技術がトータルで問われるため、移植の際にも医師の腕が大切なキーポイントとなるのです。
毛根には毛が1本だけ生えている株もあれば3・4本の株もあり、日本人の毛根は平均して2・3本といわれています。移植する毛根の量は、人それぞれの希望や薄毛のタイプ、脱毛の具合などによりますが、前頭部の生え際ライン付近の移植であれば500グラフト*前後(=1000〜1500本前後)が目安です。
植毛後は、一時的に「ショックロス」と呼ばれる脱毛が発生することがありますが、3ヶ月〜半年ほどで再び生えてきます。毛根を摘出した箇所には1mmほどの点状のかさぶたができる程度で、1週間ほどで目立たなくなります。痛みは2〜3日ほど鎮痛剤を飲めば気にならないほどに落ち着き、回復には2週間ほどあれば十分といえるでしょう。
いろいろな治療法を試してみたけど効果がなかった、薄毛対策を長らく怠っていたという人でもあきらめる必要はありません。ぜひ身近になった植毛を試してみてくださいね。
植毛範囲:頭頂部付近から生え際ラインまで
想定本数:500グラフト前後
植毛範囲:側頭部と後頭部以外の部位
想定本数:750グラフト前後